20140424

烏はいつまで白い?


昨日は1年生の作業療法概論でした.
各領域特有の対象疾患や障害像などについて学んだ後で,
毎度おなじみのワークショップを行いました.


基本的にボクの講義は
レクチャー
問題提起
ワークショップ
発表&フィードバック(次回まとめた資料配布)
の流れで行います.


今回は,身障,精神,老年,発達の事例報告を見て,
全ての事例報告の共通点を話し合い,


領域に関係なく「作業療法を行う上で大切なこと」について
考えてもらいました.


ちなみに今回の事例は,
身障:ボク
精神:ナヴェックスさん
老年:種まきOTさん
発達:ちびっこOTさん  でした(濃いでしょ 笑)


30分のディスカッションの後は,
グループごとに発表&ボクからのフィードバックです.


以下は今回ワークショップを行った8グループから出た意見です.

作業療法士とクライエントが決めた目標の実現に向けて
 色々な職種が関わっていた.
どの報告もクライエントがやりたいことが出来るように支援している.
リハビリを「させる」んじゃなくて「自分でできるように」工夫してる.
クライエントはみんな笑ってた.
クライエントを知ること(面接)から始めている.
環境に適応することを重視している.
クライエントの満足度が書いてあった.
家族や親しい人がクライエントの味方になるよう巻き込んでいる.
心を動かすきっかけを与えている.
評価の順番が似ている.

こんな意見がでました.


入学から約3週間.
少しずつ考えかたが「作業療法士」になってきています.






また昨日は4年生にもレクチャーを行いました.


ボクは4年生の講義は担当していませんが,
臨床実習を目前にした今,
評価の練習の時間に時々顔を出し,
質問や疑問に答える+実技指導というスタイルで関わっています.


かなりの学生(4年生)から質問されたのが,
「評価(検査・測定のこと)は何と何をすればOKですか?」
「やっぱり全部やった方がいいんですか?」
という質問でした.


「作業療法目標の実現に向けて必要な情報を調べる」
という視点で検査・測定を行ったことがなかったそうです.


なので質疑応答形式で4年生へ行ったレクチャーは,
一次運動野・補足運動野の話から始まり
Occupational Beingの話しで終わりました(笑)


帰り際,4年生から「1年の時から先生の講義受けたかったです」
と嬉しい言葉もいただきました(笑)


そして実習に向かう学生に対して

最後に大人のお話「時々カラスは白いときがある」をしました(笑)



20140417

ペンローズタイル





筋を通した物言いをすると,
別の何かが不足している念に支配される.


でも全てを包括する言葉を持ちえていない自分を
誰よりも自分自身が知っているから困る.


作業遂行を大切にしているから,
機能を大切にするときがある.


作業遂行を大切にしているから,
動作にこだわるときがある.


作業遂行を大切にしながらも,
必要性や可能性に応じて機能や動作も大切にするという自分が,
過去や未来(目標)を踏まえて今(協働)を相互交流的に加工し続ける.


やっぱり妥当性の高い着地点は,
目標設定とアウトカムを作業遂行で示すこと.


医療人として目標に向かう道程の中に
回復可能性に対する責任を内包すること.


そして目標とアウトカムと医療人としての責任から目を背けずに,
手段の自由度を専門性の名のもとに制限しないこと.
だと「今日の」時点では思っている.


ずっと同じ気持ちに苛まれている.
モザイク構造の作業療法の魅力をうまく説明できない.


悶々とした気持ちと,魔力のような魅力.
この双極性に支配されていつも安心できない.


ペンローズタイルを初めてみたときにとても安心した自分がいた.


周期性がないのに,高い秩序性をもったこの配列に
僕はいつか作業療法を説明できるんじゃないかと思った.



いつになるかわからないけど…






20140411

手段を持たぬ目的は単なる妄想.目的なき手段は暴力






教員になって半月.今週から新学期が始まりました.
ついに授業を持つことになりました.


しかも僕は1年生の担任です!
ホントに新前の僕なんかで良いのか?(笑)


ちなみに僕の担当科目は
老年期作業療法学,中枢神経系作業療法学
基礎作業療法学,応用作業療法学.
作業療法概論,作業療法評価測定論です.


1年生は,基礎作業療法学と作業療法概論を担当しています.


少しだけ授業の様子を紹介します.
作業療法概論の時のことです.


18世紀フランスの道徳療法や,
20世紀初頭の日本の作業療法の話しのあとで,
ワークショップを行いました.


課題は
①:Occupyの意味をみんなで調べる(スマホOK
②:①の意味や,前日の基礎作業療法学で学んだ作業の定義や作業的存在の概念を踏まえて,なぜ作業療法は,Work Therapyではなく,Life Therapyでもなく,Craft Therapyでもなく,Occupational Therapyなのか?を話し合ってまとめるというものでした.


どのグループも,占領や占有という意味にピントきたようで,中には,


「いきいきした健康な人は,いつも大切な作業に時間や心が占領されているような状態だと思うので,作業療法士は患者さんをそんな状態になれるように支援する仕事だからOccupational Therapyなんだと思いました」


なんて意見も出て,「お前らはベテランか!」と思わず突っ込みたくなるような
瞬間が何度もありました.


でもどんなに素晴らしい意見を述べることができても,
まだ彼らは実体験がありません.


これから沢山の学びや,体験を重ねる中で,
今日の発表のような気持ちをずっと持っていてほしいと思いました.
それが僕達教員の仕事ですね.


さっそく,解剖・運動・生理には苦労しているようです.
作業療法に必要な手段ですからしっかり勉強してほしいですね.


「手段を持たぬ目的は単なる妄想.目的なき手段は暴力」と同じです.
ぜひ作業療法の目的をしっかりと理解し,手段の研鑽を惜しまない
ステキな作業療法士になってほしいと思います.


しかし担任になると,生徒が我が子のように可愛いですね.
4年後,全員で国家試験に合格してほしい.


まだたった1週間ですが,彼ら,彼女らと作業を共にして,
心の底からそう思いました.



来週もまた作業療法の話しをしよう.










20140406

事例あってこその事例本3


331日に発売した「作業で語る事例報告」
初刷が発売から5日で医学書院さんの倉庫から在庫が無くなり,
急遽増刷が決定しました.


Amazon等から発送延期のメールが届いた皆様
ご迷惑をおかけしていますが,
もうすぐお手元に届くと思います.









ボクたちはいつもWhyからはじまる.
それは,多くの作業療法士が作業療法を楽しめること.
そして,結果多くのクライエントに利益をもたらすこと.



Howは作業に焦点を当てた実践.



ADOCADOC-S,みんプラ,作業で語る事例報告…
ボクたちは色々な活動をしているけど,



WhyHowはいつも同じ.
形を変えるのはWhatだけ.



今回のWhat.「作業で語る事例報告」



内容の構想を練っていたとき,
最悪と最高を両方味わったことがボクたちの強みだと思った.



どんなに頑張っても誰も理解してくれない,
途方に暮れた日々を味わった.



変えられることを実感し,嬉し涙も味わった.



だから多くの作業療法士が陥るであろう悩みと,
それに対する答えの両方を書いた.



この部分だけは,
あえて引用を並べるのではなく,



防衛機制により言語化されずに時間だけが流れた負の体験を
言葉に置き換える作業を徹底的に行った.
また,たどり着いた答えをできるだけ自分の言葉で書いた.



だから,現在作業療法に悩む人たちにとって,
共感できる言葉が少しは並んでいると思う.
少しでも悩める作業療法士の明日の希望や力になれたらと思う.



そして何よりも大切なことは,
この本には「本物」のレジメが掲載されているということ.



31例のレジメがもたらしたものは2つある.



それは,事例報告の「型」を提示してくれているということ.



そしてもう一つは,
「ホントにできるんだ」ということを証明してくれていること.



レジメを執筆してくれた著者達だって,
みんな悩んでいた時期があった.



31例のレジメは,



クライエントとセラピストの協働の軌跡であり,
作業に焦点を当てた事例報告のまとめ方を学ぶための「型」でもあり,
「必ず変わることができる」ことの証でもある.




そして,



「変わりたい」と心の中で叫ぶ作業療法士達へのエールでもある.