20140213

入院時訪問指導加算とSDM




平成26年度診療報酬点数が公開されています.
その中で,回復期リハビリテーション病棟では入院時訪問指導加算(150点)
新たに追加されました.


これはクライエントが入院する前後七日間の内にクライエントの自宅を訪問し,
環境調査等を行った上でリハビリテーション総合実施計画書を作成することで
得られる加算です.


実はこの加算,僕がずっと前から切望し続けていた加算です.
回復期病棟では,殆どのクライエントに対して,退院前訪問を行います.
しかしながら,退院前訪問指導料を算定できない回復期病棟では,
何度も訪問することによってかかるコストを軽減するために,
クライエントの能力がある程度固定してから(退院が近づいてから)訪問を実施し,
現在の能力で自宅環境に適応できるか?
または適応するためにはどのような調整が必要か?
という視点で訪問が行われることが多いのではないでしょうか?


これは,環境を「物理的環境」に限定して考えれば確かに効率的な方法です.
今回の加算のように,入院直前や直後に訪問を実施すると,
まだどの程度能力の向上が見込めるのかわからない状態で
訪問を行うことは非効率だと考えるセラピストもいるかもしれません.


しかしながら,今回の入院時訪問指導加算は,
クライエントと効果的な協働関係を構築する上で
非常に有益な加算だと僕は考えています.


クライエントは,ある日突然脳卒中などのトラブルに見まわれ,
気付けば病院のベッドの上にいます.
その後,数十日間,全く自分の生活とはかけ離れた文脈の中で,
他者に依存した日々を過ごしてから回復期病棟のドアを叩くのです.


そこで作業療法士がクライエントの作業に焦点を当て,
クライエントと協働的に目標設定を行おうとしても,
クライエントは自分を作業的存在として認識することが難しく,
効果的な協働関係を構築することは容易ではありません.


入院時(直前・直後)にセラピストと共に自宅に帰り,
自分の大切な人や物に囲まれた環境に触れることは,
クライエントが自身を作業的存在として捉え,
主体的に作業療法に参加するために必要な情報を沢山くれるはずです.


今回の加算は,クライエントと協働的に作業療法を行う上で,
必ずや追い風となってくれる加算であると僕は思います.
ぜひ作業療法士は,積極的に入院時訪問指導に参加してください.


物理的環境やマンパワーの調査に終始するのではなく,
クライエントの大切な場所に行ってください.
大切な物を見せてもらってください.
クライエントに聞いてください.
クライエントの言葉で語ってもらってください.


自分の大切な作業について語る様子を家族に見せてください.
クライエントが何故にクライエントらしく生活してこれたのか?
それを住み慣れた場所でみんなで一緒に考えてください.



僕はずっと,この加算が実現したら,
クライエントの家で初回面接を行おうとずっと考えていました.



少し遅かったけどね…












20140207

まるで白檀





今日は最後の出勤日
職場のみんながステキな贈り物をたくさんくれました



昔,何度もOBPを諦めようかと悩んだ時
いつも共闘してくれた後輩のNさんが
プレゼントとステキな手紙をくれました









Nさんは僕が作業療法理論や作業科学を勉強し始めた時
いつも一緒にディスカッションしてくれた大切な後輩



彼女が埼玉学会で,805演題中5題だけが選ばれる
口述発表に選出された時には自分のことにように飛び上がって喜びました
まるで昨日のことのように思い出します








作業療法科のスタッフが手作りしてくれたアルバムには
14年間の懐かしい写真が一杯でした



アルバムの中には,作業療法科だけでなく
PTST,病棟スタッフ,系列病院のスタッフ
昔いっしょに働いていたスタッフやドクター
121名からのメッセージカードが入ってました



メッセージに目を通すと
昔の思い出がたくさん蘇ってきて



僕がずっと作業療法に情熱を注ぎ続けてこれたのは
周りのスタッフがいたからだと改めて実感しました



いつも周りの先輩や同期,後輩達が前衛的に仕事に取り組み
クライエントに貢献しようと努力していたからこそ
僕も情熱を持ち続けることができました




本当に,本当に14年間ありがとうございました








今夜はウイスキー好きの後輩達がくれた山崎12



まるで白檀やラムレーズンを思わせる芳醇な香りは
唸るしかなく形容しがたい美味さです



たった12年でこんなに豊かな味わいを出せるなんて
僕は14年かけてもこんな味は出せなかったね



だからもっと,ずっと,頑張るね



寂しいけど楽しみで
怖いけど前に進みたいんだよね



「どんなに幸せでもとどまれないのが人生」って
むかし読んだ雑誌の裏表紙に書いてあったっけ



だから迷わず進もう



ありがとうみんな

ありがとう作業療法





20140201

14年間の協働に感謝



「人間にとって作業は水や食物と同じように必要なものである」 
                                                     William R. Dunton








「彼らは手を使う仕事の中から尊厳と満足を学ぶ」
                                 Herbert J. Hall









「人は心と意志に賦活されて両手を使うとき,それによって自身を健康にすることができる」                                               Mary Reilly









「私が言いたいのは,ふつうの,直接的な,正直な方法が考慮に値するということだ.最上の効果は患者の個々の表現の中からもたらされる.教師は個別性を重んじなければならない.それは作品の個性とか経済性とかの問題ではない.留意すべきは,私たちはアーツアンドクラフツ学校を運営しているのではないということだ.私たちにできるのは,あらゆる自発的な努力を誉めることによって個人の成長を助けることである」
                              Eleanor Clarke Slagle


彼女は作業の指導者の人格と性格を重視していた



「もしもこの点を欠いていれば,つまり相手を理解すること,やりとりをすること,たいていのケースが抱えている“最終問題”の魂の側面をとらえることに欠陥があれば,作業指導者の指導は最初の実演だけで終わりかねない.結局仕事は実を結ばず,失敗に終わるであろう」









「作業療法士とは,患者の話しを聞く人である」
                                    鈴木明子









「作業療法とは,人がよりよい作業的存在になれるよう,助け導く仕事である」
                                    鎌倉矩子









僕の作業療法に影響を与えてくれた言葉は書ききれない




学べば学ぶほどに
医療の一隅に身を置くことに違和感を感じるようになったけれど




たくさんの先人達の言葉に導かれて
迷いは,まるで霧が晴れるかのように少しずつ消えていった









先日,ポラタイコ先生が僕に向かって
クライエントのAttributionを理解することが
何よりも大切だと言ったとき




今まで自分がしてきたことの全てが
報われた気がしたんだよね




ずっと考えてたんだけど
あの時にやっと決心がついた








一度,臨床を離れることにした
作業療法の素晴らしさを伝える作業に挑戦してみようと思う




14年間の全ての迷い,悩み,
そして可能化に向けた仲間との協働に心から感謝