20131015

自分の声を聴く





当事者はクライエントのはずなのに
多くのクライエントは意思決定に参加していない


他人が加工すべきでないことを
僕達はあまりにも当たり前に加工している


本来,僕達は他人の生活を加工する権利など持っていない


その謙虚さを全ての行為の前提にしなければ
全ての手段は無自覚の内にクライエントの主体性を奪い続ける


クライエントが僕達と契約をした目的は権利を取り戻すことであって
権利を取り戻す権利があるかを裁かれることではない


だからできるかどうかではなくて
どうすればできるのかを考える


実現できるかどうかではなくて
どうすれば実現できるのかを考える


そのためにはクライエントが声を出すことが必要
クライエントが自分の声を聴くことが必要


リハビリテーションに対する漠然としたイメージの中で
施しを受けることを待っているクライエントが


リハビリテーションの当事者は自分であることを自覚し
目標設定における意思決定に参加することが必要








話しも聞かずに検査結果を睨んで悩む前に
趣味について語ってほしいと面接を恣意的に誘導する前に


僕達が最初に伝えなければならないことは
目標はあなたの声の中にあるということ









20131006

第3回YMCA米子作業療法学術集会 頂いた感想とご質問に関して






9月22日.YMCA米子作業療法学術集会で特別講演をさせていただきました.
おかげ様でとても充実した時間を過ごさせていただきました.

田住先生のご講演をはじめ,全ての演題発表がとても興味深く,
改めて作業療法の魅力を感じることのできる時間となりました.

僕はまだまだ半人前のOTですが,僕の拙い話しが,少しでも参加してくださった
みなさんの明日の臨床にお役に立てれば,こんなに嬉しいことはありません.
僕の講演内容に関しましては,種まきOTさんが詳しく書いてくれています.

参加者の方々から講演の感想をいただきましたので,一部ご紹介させていただきます.
また頂いた質問に関しましても,このブログを通してお答えさせていただきます.


【講演の感想】

・ADOCの重要性は大きい事は知っていましたが、今回の話でさらに理解が深まりました。動画で使用例を見させてもらったときに、話がそらさないように、そして、知りたいことをしっかりと聴いておられた面接だったので、すごいと思いました。これから実習があるので、参考にしていきたいと思います。OTとは何をするべきかを再確認できました。

・クライエントとの関わりを通して、ADOCの使用方法を実際に見られて勉強になった。クライエントの大切にしている作業を見つけながら、一緒に目標に向けて進んでいく姿はとても大切だと思う。クライエントとの作業を選択していく中でOTがどれくらい引き出しを持つことができるかが大事だと感じました。

・改めてトップダウンの大切さを知ったとともに、人間にとって作業、環境が生活に十分に影響することを考える事ができました。作業療法もただクライエントに提供するだけではなく、気付くことも大切と聞いて、いかにクライエントのことを一生懸命考えることが大切だなと思いました。

・クライエント中心の実践をする為に、クライエント自身の障害に制限されない希望を引き出し、クライエントの力を信じて目標を立てていくことが大切だと感じました。そのためにセラピストはクライエントを知るということがとても重要だと感じました。
・実習でクライエントの主体的参加を促すことが難しいと感じていた。もっと作業の意味などを意識していかなければならないと感じた。

・面接であれだけの情報を引き出せるのがすごいと思いました。OTを何のためにやるのかがしっかりしているし、OTがクライエントの為に何をするのかがはっきりしているので一緒に実践していけるのだと感じました。

・作業に焦点を当てた実践(OBP)を、はやく臨床で実践してみたいという意欲がわいてくるような内容でした。

・今まで自分が考えていた「作業療法」「トップダウンアプローチ」は曖昧なものであったと改めて感じました。今後、臨床に出る時に今日学んだ「クライエント中心」を意識して作業療法を行っていこうと思います。

・改めてクライエント中心の作業療法というものを学ぶことができました。ADOCの用い方やクライエントとの面接の仕方を今回の講義を参考に実施していきたいと思いました。

・『成長する力は種にある』というお言葉が印象的で、その種が芽生えていくことをまずは関わる我々が信じていくことの重要性を強く感じました。

・自分は対象者の方の想いや色々な背景を理解できてないなと思いました。講義を聞いて対象者の方と一緒になってリハビリに取り組んれいけるように私も頑張りたいと思いました。ADOCも使ってみたいと思いました。

・作業の側面を常に意識し、理解することの重要性を感じました。事例報告もとても参考になりました。それと同時に、自分はまだまだすべきことがたくさんあることを改めて感じることができました。

・ADOCの使用方法が動画を使っていて分かりやすかった。マインドマップは今まで使ったことがなかったので、実践してみたいです。

・作業療法の楽しさを改めて感じる事ができました。ありがとうございます。クライエントの主体性をしっかり高められる様、臨床でしっかりやっていきたいと思います。

・自ら健康になる力や自己実現に向かう力を備えている。震えました。

・ADOCに興味がありましたが今日のお話を聞き自分も取り入れてみたいと思いました。

・実際の面接場面の動画を見て、クライエントと目標を共有することの大切さを学んだ。クライエントの言葉で目標を作っていきたいと思った。

・クライエントの主体性を重視するOTを行うことがとても大切だと思いました。自分ではできていなかったことがたくさんあったので勉強になりました。

・OTの役割というのが明確に分かりました。クライエントのためなら難しくても作業を実践し行動している姿に感動しました。

・以前、面接動画を見たことがありましたが、とても印象深かったのでまた見る事ができて良かった。

・私の施設でも今年中にADOCを導入予定です。説明の仕事や流れ等とても参考になりました。日々の自分の臨床を振り返ってみると、思い込みやクライエントの想いを勝手に決めつけていたことがあったかもしれません。『主体的参加』を意識し、明日からクライエントとしっかり会話します。

・ADOC、COPMなどの面接評価をする大切な目的は、クライエント自身が自分について改めて考える機会となることという面を教えて頂き、意識して取り組みたいと思いました。機能面へのアプローチを行いながら、もう一本の道も同時に考え、関わっていくことの大切さを学びました。

・クライエントが主体的に生活を構築できる様に、OTとして何ができるのか、何を大切にしないといけないのかを学ばせて頂きました。面接は情報収集の為ではなく『クライエントが作業的存在としての自分に初めて出会う、作業の視点で自分の生活を振り返る為』というところが印象に残りました。

・自分の日々行っている臨床を改めて見直しました。このままで良いんだと思うこと、そして、より面接で聴くべきだということを感じた。また、OTとして、セラピストとして、やりがいを持って働くためには、私自身、目的・目標を明確にしたいなと思いました。OTとしてキラキラ充実した日々を送りたい。

・クライエント中心の作業療法を自分にとっても職場にとっても、なによりクライエントにとって当たり前となるように、日々努力していきたいと思うことができました。
・感動しました。評価をする上で大切なことや実際の面接の場面の動画を見させて頂いてとても勉強になりました。ありがとうございました。

・クライエント中心と意識はしているつもりでも、機能回復中心となっている等、作業ができることでクライエント自身の変化に結びつくことを改めて感じました。

・改めて、『いつ、どこで、誰と』の目標設定の大事さを学びました。時間に追われて目標を見失いそうになることがありますが、基本を大事にクライエントと関わっていきたいです。

・働いていて、「私はもう何もできなくなったから、したいこととかない」と言われるクライエントの方が多いです。その方々にペーパー版ADOCを使用し、行っていました。本人の想いや希望する作業を聞くことができず、諦めていました。しかし、本日の講義で、話し方であったり姿勢、考え方を学び、もっとクライエントの想い、語りをしっかり聞こうと思いました。

・クライエント中心の作業療法について考え直すことができました。また、面接方法など、参考にさせて頂きたいと思います。

・クライエントの想いを知ることの大切さを改めて感じることができました。事例を通して学ぶことができ、とても分かりやすかったです。

・患者様の想いをもっと聞かないといけないと感じた。トップダウンアプローチはなんとなく避けていたところがあったので、臨床で活かしていけたらと感じた。

・『作業』の意味等、日々機能面のことしか中心にしていなかったと、今回の講義を聴き、改めてクライエントと会話をすることがとても重要であると感じた。

・自分が日々悩んでいることが解決できそうな糸口が見つかりそうだと思うお話が聞けました。クライエントと家族、その家庭を取り巻く地域とか環境の中にクライエントが笑顔で帰っていくには自分が何をしないといけないのか、毎日の仕事の中で自分が少しずつでも変えていけるものがあるのではないかと気付かされました。

・今回講義を聞かせて頂き、自分の臨床を振り返ると、面接の時間など取らず、関わりや観察の中から『できていないこと』を勝手に目標としてしまい、一人よがりのリハビリを行っていたと思いました。今後はクライエントと一緒に、意味のある作業を見つけることに一番に焦点を当て、関わっていく必要があると改めて感じました。

・ADOCの面接場面を実際に見せて頂き、ポイント、活用方法が分かって良かった。実際の臨床場面で生かしていきたい。先生のような熱いカンファレンスが行えるように勉強と経験を重ねていきたい。

・『クライエント中心』や『トップダウン』が大切だということは知っていましたが、具体的になぜ大切なのか考えることができました。知らず知らずのうちに、機能回復ばかりになっていて、『本当に意味のある作業』やクライエントのことを知ることをしていないと感じることができる講義でした。

・あんな臨床したいです。(PT)

・『成長する力は種の中にある』『機能回復を諦めるんじゃなくて、横にもう一本別の道をつくる』『与えるんじゃなくて、気付きを与える』という言葉が胸に響きました。また、面接をする前に情報収集をしっかりしようと改めて思いました。

・なぜクライエント中心なのか、なぜトップダウンが必要なのかとても分かりやすかったです。なんども鳥肌が立ちました。

・評価の動画を見て、話しの持って生き方や展開の仕方がとても勉強になりました。もやもやしていた部分が晴れました。どうしても理想のクライエントとの面接があってそれが先走っていてクライエント中心でなかったことも気付け、明日からの臨床に生かしたいと思いました。

・作業について、今後ももっと取り組んでいけたら良いと改めて思いました。ありがとうございました。

・事例や実際の面接場面を流して頂いたことで、面接の進め方などを具体的にイメージできてよかったです。

・クライエント中心のアプローチについて、面接での言葉かけなど参考になりました。クライエントが主体的にOTに関わることにより、自分の生活を振り返って自分で見通しを立てられるようになったという話を聞いて、自分の介入でももっとそのように取り組めた場面があったのではないかと反省しました。

・日々の業務の中で自分のOT感がどうなのか不安な日々が続いていました。再度、理論的背景を考えながらクライエント中心となり得るOTを提供できるよう努めたいです。帰っておさらいします。

・『作業』について再認識できた。具体例を挙げながら説明され、とても理解しやすかったです。

・作業がクライエントにとって大切なことが、クライエント周囲も見ながら考えることが必要と思った。

・とても分かりやすくて頭に入りやすかったです。面接の意味も改めて勉強になり、これからの実践に活かしていきたいと思いました。



【質問に対して】

Q:今すぐしないといけない役割と本人が挙げているやりたい作業だったらどっちを優先してアプローチしたらいいですか?

A:ご質問ありがとうございます.緊急度の高い作業も,重要度の高い作業も,僕の中では優先順位を決めません.それが今直接協働的に取り組める作業であれば介入します.もし現状ですぐには直接的な介入が難しければ,どうすればそれが可能になるかをクライエントと一緒に考え,「今」取り組める要素にまで落としこむプロセスを踏むと思います.

Q:その方の大切な作業を聞く時のポイントやコツの様なものがあれば知りたいです。

A:ご質問ありがとうございます.私たちは普段遂行している無数の作業に対して,意味や価値を考えながら遂行しません.作業の意味や価値は,クライエント自身が考え,言葉に出した時に初めて認識として生まれるものだと思います.したがってクライエントが自分の生活を作業の視点で振り返る機会を提供し,生まれる言葉をしっかりと共有することが大切だと思います.そのためには,まず作業療法士が,自分が何者なのかをしっかりと表明することが大切であると思います.なぜなら人は相手との関係性を踏まえて,表明する内容を操作するからです.例えば,体調について質問されたとします.その質問してきた相手が自分の体調に関して何かをしてくれる人でなければ,僕は詳しく説明したりしません.おそらく当り障りのない返答をすると思います.まずその質問をされても,改めて自分の体調について深く考えることもしないと思います.しかしその質問をした人が,自分がお金を払ったマッサージ師であれば返答は異なります.おそらくじっくりと自分の体調について考えて,できるだけ詳しく状態を伝えたいと思い,表現を駆使すると思います.まずはしっかりと作業療法士が何をする人なのかを伝えることから始めてください.また,やはり作業に関する知識も必要であると思っています.先日のお話の中では,詳しい話しまではできませんでしたが,作業を意味・機能・形態の側面で捉えようとするだけでも,話しが偏ることは少なくなるような気がします.最後になりますが,僕が一番気をつけていることは,クライエントの苦しみや希望に対して自分の関心の中で勝手に優先順位をつけないということです.自分が作業の話しを聞きたいと思っているから,機能に固執した発言を歓迎しない態度を取ったりすることは,クライエントとの関係性の構築を妨げます.全てを受け止めたい.心の支えになりたいという気持ちをいつも大切にしてください.

Q:寝たきりの方でご家族も病院に来られない方に対して、ADOCはどのように使用したらいいですか。

A:ご質問ありがとうございます.ベッドサイドや訪問リハでも使えるように,ADOCはポータブルデバイスであるiPadに換装されています.ぜひベッドサイドで使用してください.

Q:他職種との連携など、病院として変わらなければならないと感じました。具体的にどうすれば良いのでしょう。

A:ご質問ありがとうございます.ウチでは最初のカンファレンスに時間をたっぷりとかけています(クライエント1人に対して40分~1時間程度).それぞれの職種が自分の専門性の中でクライエントを評価して,その評価結果をしっかりと共有する努力をしています.

Q:クライエントとの信頼関係を作る為にやっていることなど、教えてほしいです。

A:ご質問ありがとうございます.これは作業療法に限定したことではありませんが,作業療法の原点がそうであったように,やはり人道主義哲学を持つことが基本だと思います.

Q:また来年も来て良いですか?

A:ご質問ありがとうございます.私がお答えすることではないと思いますが(笑)素晴らしい学術集会ですから是非また参加してください(笑)僕も可能であれば来年も聴講者として参加したいと思っています.



皆様.感想やご質問.本当にありがとうございました.
今後ともよろしくお願いいたします.