20130928

11月3日 長野県でお話させていただきます



 



このたび,長野県諏訪地域のOTさんの有志により
お話する機会をいただきました.

以下に情報を記載しますので,
興味のある方はぜひ御参加ください.



研修タイトル:「作業に焦点を当てた実践研修会」

日時:2013年11月3日(日) 14:00~17:00(受付13:30~)

会場:諏訪中央病院 研修センター3階
〒391-8503 長野県芽野市玉川4300    TEL 0266-72-1000

内容:作業的存在としての健康を支援する作業療法の専門性とは?
   対象者を理解するための面接技術  ほか

参加費:2000円

参加申し込み:nra20749なgmail.com(なを@に変えてください)
       諏訪共立病院 中塚聡

*メールに以下を明記してください
1:氏名
2:所属(OT以外の方は職種も明記してください)
3:連絡先(メールアドレス)
4:講師への質問など

締め切り:2013年10月20日(火) 


長野県にお邪魔するのは学生の頃以来,15年ぶりです.
今から皆様にお会いするのを楽しみにしております.
参加される皆様.どうぞよろしくお願いいたします.




20130910

第17回作業科学セミナーの事前参加登録期間を延長します



猪苗代湖と磐梯山


会津若松城(鶴ケ城)


裏磐梯の紅葉(会場から60分)


五色沼


ユラックス熱海(OSセミナー会場)



第17回作業科学セミナー事前参加登録ですが,
おかげ様で158名の方から申し込みをいただきました.
申し込みをしてくださった皆様に心から感謝申し上げます.


参加される皆様にとって有意義なセミナーになるよう,
実行委員一同,精一杯準備を進めてまいります.


本日は,皆様にお知らせがあります.
7月末に締め切らせていただいた事前参加登録ですが,
締め切り直後より,


「当日参加を考えているが,本当に会場に入れますか?」
「参加申し込みを忘れてしまった.登録しないと職場から出張がでない」
「11月以降のシフトが未定で,事前参加登録ができなかった」


などのご意見を多数いただきました.
そこで実行委員会で討議した結果,
事前参加登録期間を延長することに決定いたしました.


平成25年10月31日(木)まで,事前参加登録(参加費納入)を延長いたします.
福島セミナー参加をお考えで,まだ事前登録をされていない方は,
この機会にぜひご検討いただければ幸いです.


第17回作業科学セミナー 実行委員長 齋藤佑樹





申し込みはコチラ





20130907

当事者が認識した作業機能は意味に付加されることがある.


昨日は福島県作業科学研究会 & 作業科学セミナーの実行委員会でした.
今回は,大阪から酒井ひとみ先生がいらしてくれました.








お昼まで臨床をしてから,酒井先生と合流.大好きな蕎麦屋の「わき水」で
ランチをして,セミナー会場の下見を行いました.








その後は猪苗代の DEN DEN COFFEE で美味しいコーヒーを飲みながら時間を過ごして,
猪苗代湖をのんびり眺めてから会場の太田西ノ内病院へと向かいました.









今回の研修会は,酒井先生から,「作業科学入門」と題したご講義をいただきました.
作業科学の始まりから現在までの歴史や,作業科学の位置づけ,過去に作業科学が
もたらした功績などについて,非常に分かりやすくお話していただきました.


作業科学という基礎学問を,作業療法士としてどのように扱い,向き合い,
自分たちの仕事に活かしていくか?またUSCを代表する作業科学の創始者達が,
何を考えて,作業科学を作り,発展させて来たのか?などがとてもよく分かり,
作業科学がより身近に感じることができる講義でした.


その後は参加者でワークショップを行い,研修会は21時半に終了.
とても濃密な時間となりました.


今回行ったワークショップは,札幌セミナーでも行ったものです.


①自分の携帯電話の画像を1枚選ぶ
②その画像に名前をつける
③なぜその画像を選んだのかを書き出す
④その理由を満たす作業を具体的に挙げる
⑤その作業について他者がインタビューを行い,
作業の意味・機能・形態を記述するというものです.


みんなで活発な話しあいを行い,充実した時間となりました.
実はこのワークショップは,以前から何度か福島県作業科学研究会でも
行ったことがありました.


このワークショップを行うと,いつも同じ疑問が会場から挙がりました.
それは,「作業の機能に入れるべきか.意味に入れるべきかを迷う項目がある」
というものです.


例えば,ライブに行くことが好きな人にインタビューをすると,
音楽が好きだったり,友人と盛り上がる場所に行くことが好きだったり,
ライブに行くことでストレス解消になったり…
沢山の作業の意味を語ります.


しかしそこで,ストレス解消は,自分にとって作業の意味でもあるけれど,
作業の機能にも入るのではないか?というような疑問,質問が上がるわけです.


この疑問については,参加者で何度もディスカッションをしてきました.
客観的に観察できるものは作業の機能に含めて,
当事者の主観でしか語ることができないものは,
意味に入れるべきではないか?など,色々な意見が過去にでました.


僕も正直,はっきりと説明することができなかったので,
この機会に酒井先生に質問させていただきました.
すると,とても明確な答えがかえってきました.


「それはおそらく…2回以上遂行したことがある作業なんじゃないですか」


つまり,作業を遂行することによってもたらされる効果や貢献(作業機能)は,
作業を行った当事者がそれを認識し,そこに意義を見出した場合,
次回その作業を遂行する際に,元々の意味に付加される形で,
作業の意味としての側面も持つことがあるということです.


ずっと悶々としていた疑問に対して,明快な答えをいただき,
僕達は,霧が晴れたような気持ちになりました.


研修会の後は,作業科学セミナーの実行委員会でした.
各係からの進捗状況の方向や検討事項の確認,新たな課題抽出などを行い,
話し合いが終わると時刻はすでに25時半をまわっていました.







酒井先生からいただいた貴重なアドバイスを活かして,
ぜひ面白い作業科学セミナーにしたいと思います.
参加される皆様.どうぞよろしくお願いいたします.









20130903

個人的な体験


作業療法士はナラティブという言葉をよく使用します.
ナラティブとは,語りや物語を指す言葉です.


人生の認識は,実体験と,その体験をどう解釈するか.
この両側面によって主観的価値が決まり.次の行動の動機や理由が生まれます.


ナラティブには,2つの代表的な作用があります.
それは,現実組織化作用と現実制約作用です.


そういえば,随分前に,県士会主催の研修会で講師をした時,
ナラティブアプローチの説明をする際に,
参加者に「1分間の自己紹介」をしてもらったことがあります.


自分の人生を振り返り,隣に座っている参加者に
それを1分間で伝えるというものです.


例えば

「子どもの頃は,いつも外で遊んでばっかりいて,全然勉強しないこどもだった.中学生になって野球部に入ってから,努力することの楽しさを学んだ.それからは以前よりも勉強もしっかりするようになった.高校2年の時,試合中に足首を骨折して,初めてリハビリテーションの世界を知った.それからというもの,自分もリハビリの仕事につきたくて,必死に勉強した.今年からやっと作業療法士になれた自分は,障害で苦しむ人々が,少しでも人生に前向きになれるような治療を提供したいと思っている」

みたいな内容になるわけです.


でもこれは,半分正しく,半分は事実と異なる内容なんです.


子どもの頃も,勉強した経験は必ずあるはずですし,
野球部に入った後も,練習が辛くて逃げ出したい瞬間が何度かあったかもしれません.


1分間の自己紹介は,事実を簡潔にまとめる作業ではなくて,
自分の過去を解釈を踏まえてまとめあげる作業でした.


人は,過去の事実をそのまま積み重ねるのではなくて,
そこに解釈というフィルターを通してまとめ上げ,
感情や意味や価値.語る言葉を作り出します.
それは,明日の行動に影響を及ぼす大切な内的作業であり感覚です.


作業療法士は,クライエントの主観的な物語に
常に関心を寄せる必要があると思っています.


勿論,治療の効果をクライエントが解釈した物語の中にだけ求めるのは
無責任だと思います.


クライエントが,可能な限り心身機能を駆使して,
大切な作業に参加できることに重きを置いて,
その経験から肯定的な物語が生まれることが大切であると思います.


機能の一部を失ったクライエントが.
ある程度の機能を取り戻し.
作業ができるようになります.


あるクライエントは,その体験から次の目標を立案し,
更に自己を高める経験を積み重ねます.
その積み重ねは,自己効力感を高め,
自分の人生を価値のあるものとして捉えることが可能になっていきます.


一方あるクライエントは,ある程度の機能を取り戻しても,
まだ取り戻せていない機能にばかり関心が偏り,
病前の自分にもどれない事実に悲観し,負の循環へと陥っていきます.


この違いは,どのくらい機能が回復したとか,
そんな簡単な理由で説明できるものではありません.


動機づけられた作業に向かって,
自己の可能性を最大限発揮して作業の可能化を達成し,
その達成と,そのプロセスで回復した機能に対して向き合い,
そこに解釈が生まれ,更に次の動機が生まれる.
そんな事実の改善と解釈の相互作用が必要です.


常にクライエントの作業の可能化を考える.
可能化に向かう道程で回復を目指せる機能に関心を寄せる.
また,自分という存在と積み重ねる時間によって作られる物語に関心を寄せる.
このような多面的な思考がセラピストには必要であるといつも考えています.


作家の大江健三郎は,生まれてきた長男に重篤な障害があることを知った時に,
「個人的な体験」という小説を書いています.


その小説は,大江健三郎が,
自身が障害を持って生まれてきた息子と歩む人生をどのように捉え,
前に進むべきかという大江自身の解釈に必要だった小説であると思います.


大江自身も「個人的な体験」を執筆するという作業を振り返り,
このような言葉を残しています.



はじめての子供の頭部に奇形を持つ誕生があって,
僕はかってない揺さぶられ方を経験することになった… 

いくらかの教養や人間関係も…
それまでに書いた小説も…
なにひとつ支えにならないと感じた…

そこから立ちなおっていく…
いわば作業療法のようにして
僕は『個人的な体験』を書いたのである…