20130219

心をこめて書きました






いつも世界は優しかったのに
いつの間にか脅威に変わっていた

孤独は世界とのつながりを求めるけど
つながることはたやすくなかった

必死に糸口を探そうとするけれど
導く答えは妥当性を欠くばかりだった

一時の心地よさを与えるものはいたけれど
いつどこから来るのかさえわからなかった

明日の保証は与えられなかった

過去の栄光は自分を保つために有効にみえたけれど
現実とのギャップに苦しむことのほうが多かった

自分を定位できない日々のなかで与えられる娯楽は
混沌の中の浮遊した感覚だった

従順であることを選択した事実は
安心という名で呼ばれる退廃的な日々だった







壁があるのならいつも壊したいと僕は思う

壁を壊すとは
世界と結びつくことができる感覚を持てるということ

世界が成立と安寧を内包していること
世界を受け入れる感覚の中に
自分を守る感覚から解き放たれること

作業療法の本質に疾患は関係ない

大切な作業を通して
世界と結びついて
よりよく生きること

よりよく生きようと思えること

クライエントが言葉を失ったら
想いを汲み取る努力を惜しまない

クライエントが僕を理解できないのならば
どうすれば理解できるのかを考える

どうしてもクライエントが世界と結び付けなかったら
僕がクライエントの世界の住人になる








学術誌「作業療法」に研究論文が掲載されました.
ADOCを使用した認知症者とのSDMに関する論文です.

世の中の認知症に苦しむ多くの方々が
もう一度世界と手をつないで笑顔になれるように

心をこめて書きました











20130211

誰がために鐘がなっているのかを見に行かせてはいけない





ラポール (rapport) とは臨床心理学の用語で,セラピストとクライエントとの間の心的状態を表す.もとは,オーストリアの精神科医フランツ・アントン・メスメルが「動物磁気」に感応したクライエントとの間に生じた関係を表現するために用いた語である.その後,セラピストとクライエントの間に,相互を信頼し合い,安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す語として用いられるようになった.カウンセリングや心理療法をどのような立場から行う場合であっても,ラポールは共通した基本的な前提条件として重視されている.


多くの場合,医療現場において,患者は治療者に対して従順である.
ゆえに,一見すると患者−治療者の関係性は問題がなく見えるものである.
しかしながら,従順であるということと,ラポールとは同義で扱われるべきではない.

若い頃,担当するクライエントから拒否されることが時々あった.

今振り返れば,おそらく当時の僕は,
無意識にクライエントに従順さを求めていたのだと思う.

それは,クライエントを1人の人間として尊重することから
かけ離れた態度だったのだと思う.

いくら丁寧な言葉を使っても,接遇に気を配っても,
医療者として,「〜してあげよう」という無意識の傲慢や,
「拒否されたらどうしよう」という卑屈さは,
非言語的な空気や雰囲気となって,クライエントへと伝わっていたのだと思う.

今はもちろん,クライエントから拒否されるようなことは全くない.

正確に表現すれば,
拒否されなくなったのではなくて,前向きになれない気持ちや,
動きたくない気持ちさえも,パートナーとして相談しあえるようになったということ.

やはり,どんなに技術があっても,知識を持っていても,
一番大切なことは,目の前の苦しむクライエントに対して,
自分という存在全てを使って力になりたいと心から思えることだと思う.

意欲がないことや,拒否することを問題視する声をよく聞くけれど,

意欲を持てなくて,一歩を踏み出せない人と一緒に,
新しい未来を作るのが仕事なんだよ.