20110719

スローハンドに憧れたあの日の感覚・・・







kibiさんが先日ツイッターで、片手でギターの練習をします!と書いていました。

今日、気になって聞いてみると、ギターを導入したい右麻痺のクライエントがいるのだそうです。

左手のみで弾く方法を朝から一緒に話し合いました。

kibiさんの机の横には、kibiさんの愛器、Martinが鎮座していました!

先日、友利さんが見せてくれた三線を片手で引く片麻痺のクライエントを真似て

片手ではじくこともしてみましたが、ギターは片手ではじく場合、どの場所をはじいても

開放弦の音が出ます。この方法は使えません。

色々と試行錯誤した結果、ピックを取り付けた軽量のリーチャーを

口にくわえて弾く方法を考えました。

最初に僕が試してみると、これがなかなか難しい・・・・

リーチャーの長さや角度、ピックの角度などを微調整しながら、

最適なセッティングを試していきました。




クライエントのKさんをOT室に呼んで、試してみることにしました。

大掛かりな印象を与えてはいけない・・・

あの日の楽しさを思い出して欲しい・・・

自分のこれからの生活に可能性を感じて欲しい・・・

様々な想いの中、この弾きかたを披露しました。




Kさんは団塊の世代

男性は皆ギターに没頭した世代です。

60歳を過ぎた今も、おしゃれに気を配るKさん

これからギターがKさんにとってどのような作業になるのか・・・

僕たちの協業の質が問われます・・・



Martinの音色はやはり綺麗でした・・・

これからKさんの為に

スーパーライトゲージに交換するかもしれません・・・

Martinにライトゲージは不釣合いですが

それがKさんの音色になるんだと思います・・・




僕も昔、クラプトンに憧れて

四六時中ギターを弾いていた時期があります。

僕のギターはYAMAHA製で、決して高価なギターではなかったけれど、

ギターを弾くのが楽しくてたまりませんでした

スコアを買いに、楽器屋に自転車で向かうのが楽しくてたまりませんでした

レスポールを初めて弾いた時は、その重さに驚きました

初めてディストーションをかけた時はシビれました

マルチのGT5を購入した日は嬉しくて一晩中色々なエフェクトを試しました




今日、KさんがOT室に来る前、僕は色々口で弾くためのセッティングを試しました

最後に綺麗な音が出たとき、ただただ嬉しかったのです

その感情は、はじめてティアーズインヘブンを弾けた時のそれと同じ感情でした




クライエント中心と関心相関的パターナリズムと可能化の技能

その意味を問い続けながらの協業を・・・











20110714

20110710

作業を通しての健康と公正を・・・



ADOCがトップセールス1位になりました!



3月11日の大震災で、僕も被災者の1人になりました。

しばらくの間は、作業療法士としての業務を行うことができず、

毎日、病院の中の緊急度の高い業務を補助する役割を遂行しました。

日常の業務と比較して、かなりの作業形態の変更を余儀なくされたわけです。

病院の体制や、町が落ち着きを取り戻した時、また作業療法士としての

業務を再開できるようになったときは、本当に言葉では表現できない気持ちでした。

まだまだ震災の傷跡は深く、多くの被災者が苦しんでいます。

自分の役割をしっかりと遂行し、社会に貢献しながら、

自分にできる支援・するべき支援を行っていきたいと思います。

被災された多くの方々に、心からお見舞い申し上げます。




ひとつの被災地支援の方法かと思います。
この度、株式会社レキサスさんのご厚意により、
今回の震災で被災した、もしくは震災によって非難した方(医療福祉関係者)に、
抽選で5名にADOCをプレゼントします。
*インストールできるiPadを所有していることが条件です。

御希望の方は、下記の項目を
adoc.projectgmail.com までメールしてください(を@に変換してください)。
〆切は7月23日(土)です。当選者にはお電話させていただきます。

1) 所属施設(休職中の方は前職を)
2) 氏名とよみがな
3) 住所
4) 専門職種
5) 電話番号(当選者にはお電話します)

被災した多くの方々の、イキイキした生活を取り戻すために・・・
ADOCが少しでもお役に立てれば幸いです。








被災地に、作業を通しての健康と公正を・・・




20110709

ADOC debut







ついにADOCがデビューしました。




先日の全国学会でADOCを使用した事例報告をした際に

沢山のひとに声をかけていただきました。




その時に僕は、過去に構成的面接評価法を使用したことがあるかを

多くの人に質問しました。

殆どの人は、「使用したいけど、使用したことがない」とのことでした。




作業に焦点を当てた面接は

1 難しくないこと

2 クライエントと作業療法士が対等の立場で意思決定に参加できること

3 作業の個別性にしっかりと焦点をあてられること

4 その面接を行うことで、作業療法士は専門性の中で支援する力を得て、
  クライエントは、意味のある作業の可能化と公正につながること

これが大切な要素だと思います。



ADOCはその全てを実現する可能性を持ったツールです。



ADOCがリリースされたということは、

多くの作業療法士がADOCを使用できるということ・・・



多くの作業療法士がADOCを使用できるということは、

多くのクライエントが意思決定に参加できるかもしれないということ・・・



多くのクライエントが意思決定に参加できるということは、

クライエント個々が、作業的自己の実現に前進できるかもしれないということ・・・



クライエント個々が自己実現に向かえるということは、

クライエントがクライエントらしく、

作業療法士が作業療法士らしくあることができるということ・・・








作業療法を心から愛し・・・


全てのクライエントの幸せを心から願う・・・


そんなメンバー達が開発したツールです











20110706

夏の材料・・・




今朝は病棟のベランダに植えた朝顔の棚を作りました。


一番重症度の高いクライエントの部屋の窓から見えるように


部屋の窓一面に朝顔が咲くように


病棟科長と交渉して、上の病棟のベランダから


何本もロープを貼らせてもらいました。


今日は一輪目の朝顔が咲きました。


もうすぐ棚いっぱいの朝顔が咲くと思います。


毎日の水やりも、クライエント達が担当してくれています。








夏は、時間の経過と共に訪れるのではありません。


春を満喫したから夏は訪れます。


黄緑色の草木の葉の色が、日増しに深緑に変化して夏は訪れます。


虫や蛙の鳴き声が夏を運んできます。


日中額から流れる汗が、夏を感じさせてくれます。


焼けるような日差しの厳しさに夏を感じます。


子供達が薄着で走り回る姿を見て夏の開放感を感じます。








ほとんどベッドから起きられないクライエント達にも


ちゃんと夏が訪れるように・・・




20110705

向こう側への憧れ・・・



先日全国学会にも一緒に参加したYさんが頑張っています。

重度の左麻痺のクライエントTさん。

体幹機能が著しく低下し、車椅子座位で簡単な作業を行う際にも

大きく姿勢を崩してしまう事例です。

身辺ADL訓練に加えて、Tさんの食事を主な課題に挙げていました。

当初、Tさんの集中困難をチームで問題に挙げ、

食事の際は、皆が集まる食堂での食事を取りやめ、

扉を閉めた個室での自力摂取に向けた介入を始めました。




僕は度々その個室を訪ねていましたが、

なかなか介入が上手くいっていないようでした。

一時間かかって何とか摂取する・・・

そんな日もあったようです。




そこで、MOHO10の側面から

Tさんの状態をリーズニングすることをYさんに提案しました。

僕が自作したリーズニングシートを渡し、

Yさんにシートを埋めてもらいました。

Tさんの語りに耳を傾けたり、観察を続けていくうちに

色々な要素が見えてきました・・・




漬物作りや料理にかなりの価値を見出していたこと・・・

入院している今の環境が苦痛でたまらないこと・・・

毎日の食事の時間が憂鬱なこと・・・

病棟では、殆どの時間を無為な時間が占め、

作業剥奪状態に陥っていること・・・

そのことが、Tさんの「もう何もできない」という感情を

助長していること・・・

そして

遠くの食堂から聞こえてくる、他患の声が気になっていること・・・

様々なTさんを取り巻いている要素が視覚化されてきました。




そこでYさんは気付いたようです。

集中困難=個室で対応

このアセスメントはスタッフが勝手に決め付けた

効果的環境“であったことに・・・





Yさんはすぐにチームと交渉し、Tさんの食事場所を

皆と一緒の食堂に変更しました。





集中困難だから避けたほうがイイ・・・

当初そう誰もが思った食堂で、

Tさんはほんの数日後、

食事を普通にたいらげたのです・・・

そして、Yさんに向かって

「みんなで食べると旨いない」

と、福島なまりたっぷりの笑顔で語ったのです・・・





僕たちはクライエントの利益を考えていつも評価・介入を行います。

「このような状態のクライエントには、このような介入が望ましい」

という暗なプロトコールを沢山もっているのではないでしょうか?

しかしそれは、個人を取り巻く要素や語りに

耳を傾けるという姿勢とともに活用しなければ、

“思い込み”にもなりかねません・・・

自分の頭の中のフレームを一度壊して、

クライエントの語りに耳を傾けて

フレームを再構築する・・・

簡単なようでなかなか難しいスキルです。




Yさんはその後、kibiさんの助けも借りながら、

Tさん自慢の漬物作りを行ったり、病棟の野菜の世話を行ったりと、

Tさんの自分らしい生活を支援するために奮闘しています。





 リフレーミングできる人・・・