20110522

理念をどう実践に結びつけるか・・・


回復期リハビリテーション病棟の基本理念は”寝たきり防止”と”家庭復帰”です。

そこで多くのセラピストの中で生まれる思考のプロセスは、廃用症候群の予防・改善を図り、寝たきりを防止すること・・・自宅環境を想定した動作練習を豊富な訓練量の元に提供し、家庭復帰を実現すること・・・ではないでしょうか?

しかしここで考えなければならないのは、「なぜ僕たちは寝たきりにならないのか?」「なぜ僕たちは住み慣れた地域で生活を継続できるのか?」ということです。

それは確かに階層を一つ下げて考えれば、廃用症候群をきたさない全身状態を有し、家庭での生活動作を自力遂行できるからです。間違いないと思います。しかしそれだけでしょうか?

僕たちは、義務や願望から構成される様々な意味のある作業で時間が埋まっているからこそ、廃用症候群をきたさない全身状態を維持できていたり、住み慣れた地域で生活する意味があるのです。

全国的な統計を見ても、自宅退院後、ADL能力が維持できず、介護度が上がってしまったり、リフレッシュ入院などとネーミングされたADL能力再獲得の為の再入院・訓練が多くの病院で実施されています。

でも考えてみてください。障害を有しながら、訓練など何年も行っていなくても、ずっと能力を維持し、住み慣れた地域で生活している障害者は沢山いるのです。

退院後、能力が維持できない理由は、訓練量や、動作効率などだけでは説明がつかないのです。

障害を有した”新しい身体”で、意味のある作業に従事し、その遂行の中で結果ADLが維持されたり、新しい希望や目標が生まれたり、地域で生きる役割やアイデンティティが定位できたり・・・そのような主体的な自己実現的循環が必要なのです。

その為にも僕たち作業療法士は作業に焦点を当てなければいけないと思います。障害に悲観し、機能回復にしか目が向けられないクライエントに意味のある作業に従事できる幸せを感じてもらわなければいけないと思います。そしてそれを実現するための支援を行わなければいけないと思います。それができれば、退院後、能力を維持できないクライエントに対する原因と対策も、クライエントの自己実現に繋がるものになるんじゃないかと思います。

作業療法士が胸をはってそれを実行していく環境を作るためには、クライエントの作業的存在としての意思や願望を絡めた個別性の高い主目標を設定し、それをチームで共有すること。そしてその目標を実現するために、それぞれの職種が、それぞれの専門性の元にトップダウンし役割分担するような構造が必要なんだと思います。自宅退院って目標じゃなくてただの退院先です。


                 
~作業選択意思決定支援ソフト~


0 件のコメント:

コメントを投稿