20101019

ファインダー越しに見えた輝きに・・・



これは失語症のクライエントSさんの一眼レフです。今はあまり見ることがなくなったフィルムの一眼です。最初に上手く意思疎通が図れなかった僕は、ADLや機能訓練に加えて、御家族の情報から病前大好きだったヨガを取り入れて介入を行ってきました。SさんはOT室の和室で毎日行うヨガの時間と空間をとても楽しみにしており、毎日一緒に遂行してきましたが、便秘や点眼の時間などを気にして、病棟を歩き回り、頻会に看護師に点眼時間を確認に来るなどの落ち着かない様子が観察されていました。

もっと価値ある作業で時間を埋める必要性を感じた僕は、上手く評価できるか半信半疑ながらも、失語症のSさんにADOC(作業選択意思決定支援ソフト)を使用してみました。満足度や重要度の選択は理解ができませんでしてが、今まで全く分からなかったSさんの一面が沢山表出されました。

家族との団欒が恋しくて仕方ないこと・・・ラジオを聴くのが大好きで、自宅でもお気に入りのヘッドフォンでいつも聞いていたこと・・・写真が大好きで、自慢のレンズを二本もっていること・・などなど様々な想いが単語・短文レベルで嬉しそうに表出されました。内容を御家族に確認すると、やはりSさんから表出された内容に間違いはありませんでした。

御家族にお願いして、すぐに病室にラジオを用意してもらいました。この頃から、不安そうに歩き回ったり、頻会に看護師の元を訪れることが減りました。また、外泊時に、危ないからと禁止されながらも、2階に上がろうと何度も家族に制止されていたSさんの、2階に上がろうとしていた理由が分かりました。御家族から、「先日カメラやラジオの話がありましたが、そういえばお父さんは、テレビやステレオなどの家電が大好きだったので、そこに行こうとしているのかもしれません!」との情報を頂き、次回の外泊時は、Sさんの愛用していた物品を全て1階で外泊時に使用している居室に移動してもらいました。それからは予測できない行動がなくなり、自宅でも自分の時間を楽しむ様子が観察されるようになってきました。

この変化に、今まで意思疎通が困難で、自宅でみることを躊躇していた御家族にも変化が見られ、とにかく入院期間の延長を希望していた奥様から、「来月の中旬に連れて帰りたいと思います」との希望を聞くことができました。

残りの入院期間でADLやサービスの最終的な調整を行いながら、もしかしたら一生触ることのなかったかもしれない大切な一眼で、一緒に美しい秋の表情を切り取りに行こうと思います。

2 件のコメント:

  1. 今日のカンファレンス、院長先生がすこしいいこと言いましたね・・・(●^o^●)!Sさんみたいな積み重ねが大事なのでしょうか・・・ちょっと嬉しかったです。

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  2. kibiさんありがとうございます。
    価値ある作業の大切さを院長が・・・
    嬉しかったですね!
    これからもっともっと
    みんなでアピールしていきましょう!
    いつもありがとう

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